松ジ-さんに1打がでた スタ-トから打った球は緩く
ふらふらしてゴ-ルに迫り外れたかと誰もがおもった
ですが急に方向を変えてゴ-ルのホ-ルに入り澄ました感じだった
「おおい1打だ やったね!」
「松じ-に1打が出たよ、、、」
プレイ中のみんなに1打の快挙がたちまち伝わり
拍手が新入者の松ジ-さんに浴びせられた
親しい者はわざわざ松さんの肩をたたきに来たりした
「松さん ガッツポ-ズだ」
初めて両手を上げた
80代も終わりに近いジ-さんの手はまっすぐには上がらず
湾曲して上がるので遠目ではマルに見える
それを見て再度拍手と笑いがわきおこった
夏も終わりの頃で真っ黒に日焼けしたジ-さんの顔は汗に濡れて
更に黒く光った
松ジ-さんの1打は周囲の仲間を刺激した
1打への競争は激化していった
皆が切磋琢磨して更に1打が誰彼にでた
皆が緊張して無心に球をうった
ゴルフの経験者が数人いたが彼らがそれぞれに
グリップやスタンスの位置更にホ-ムなど
基本的な技術を披露したりしたので
皆熱心に聞き入っていた
松さんはその後よく1打を出すようになっていた
秋にさし掛かったある日のこと
松さんは1打を連続叩きだした
そして3度目の1打をだしたとき
松さんは勿論全員が唖然として立ち尽くした
暫らくして「松さん 3本、、」
「わぁ」という声が起こった
誰かが松さんの上げた両手を支えている
「やったね やったね!」
ジ-さんの顔が汗と、、、涙にぬれてくしゃくしゃだ
兵役に駆り出され戦後のどさくさの中を生き抜いてきたジ-さん
にとって決して晴れがましいステ-ジはどれ程あったろうか
今自分が圧倒的優位な場所にあることをみんなの祝福を浴びて
ハット知らされたことだ
その夜 80代以上の7,8人で松さんを囲んで
祝杯をあげた 特に戦争経験者同志は我々の想像以上の
親近感を持っているように見える
だからその話には飽きることなく盛り上がり
花の上に花が咲く