高校時代に好きな仲間を集めて

創作をした 前年度の文芸部「黒潮」は20ペ-ジほどだったが

私達は300ペ-ジのボリュ-ムにした

皆が楽しんで書いた創作は変なものもあったが

大方面白く又は高校時代の青春の悩ましさを

せっせとつずったものが多くお互いの心情を

素直に記述していて嬉しく楽しかった

それを発行したあと未だ燃焼しきれなくて

「同人誌」を作る話がすぐまとまった

「たわむれ」というかたかな名にした

私の命名だった 「人間の一生は先人が示したごとく

大した意義はないので せめて沸き上がるイメ-ジの

造型を楽しもうと呼びかけた

すると皆同感だと言ってくれた

イメ-ジの造型を文章でやろうと

そして一人ひとりのイメ-ジを出来るだけ粋にまとめよう

そこで仲間たちが学業をサボリながらかいた

途中での編集会でそれぞれの作品のプロセスを

語り合うにつれ若い命が燃えに燃えた

身の程知らず 怖いものなし そこには偽りのない若者が

目を輝かせていた 或る者は生き生きと

又あるものは目をしばたたいて寝不足を訴えた

塾したフル-ツの甘く酸っぱいカジュが惜しみなく

指の間から土に滴り落ちるように心地よい

青春だった

或る時その仲間の内4人だけで近海の無人島に

遠征した 木造の漕ぎ船である

その日風は穏やかいい風だから帆をあげた

波も少なく順調な船出だった

こじまを物色してみてすぐさま上陸したくなる小島に

出会った

やあ 今夜の宿だ

皆てわけして漁ヲするもの 火をたくもの

薪は浜辺に打ち上げられてよく乾いていて

一晩中炊いてもまだ残るほど

朝方まで眠れない 話が多すぎるのだ

若者の話は決まっている

女の話 一人ひとりの批評 あれ彼女のこと

そんなに見ていたのか それはいいとか柄になくね

と言って孤島の一夜はすぐ開けていく

朝寝坊している4人に突然雨が襲った

「引き上げだ 早く船にのりこめよ、、、」

K君のいつになく厳しい声 この孤島1夜の旅の

発案者 皆転げるように船にのりこんだ 同時に

船は沖に出ていた

風が強くなる 帆を上げるぞ 危険でも早くここを抜けたい

K君は帆のロ-プを操るのに余念がない

彼の表情をみてみな黙った

船のスピ-ドが素人の皆から見ても異常だ

A君がたまりかねて「Kよスピ-ド落とせ あぶない」

「馬鹿言うな」K君の顔が青い 本気だ

この時のことを60年後の昨年K君がわがやを訪ねたとき

うちあけた

「あの時 ここで皆を殺すのではないか」と切り出した

あの時ロ-プを操り損ねたら船共に海にほ折りだされそうだった

俺の顔は青かったはずだ しまったなあと後悔して

胸が痛かった 海に投げ出されたら俺は陸地にたどり

つけるが3人は無理だ だから俺だけ生きてるわけにはいかぬ

よし 4人ともしんでもいい しぬまで全身全霊だ

あの時死んでもいいからやるだけやるんだ

K君はあの時の悲壮な顔をしてみせたが

少年と80歳の今とはとうすぎる

「そうだったのか それは心配かけたね、、、」

遠い昔の文芸部とたわむれ同人 既に

あの挑戦の意気はない

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