松爺さんは毎日煙草を40本吸った
家の中では家族の手前吸いにくいので
家のすぐ下の浜辺に降りた
何時もの円い石にこしをおろして
沖行船を眺めながら
ゆっくり煙草に火をつけた
たて続けに2本すい暫くして1本吸ってから
腰を上げる
家に帰ると庭をとぼとぼ歩きながら
いつの間にか煙草をくわえている
「タバコはうまくねえ、、」
うまくねえなら吸わんでいいのだが
病みつきになって何十年 止めれない
頬はこけてせき込むことがよくある
一度せき込むと止まらない
遠目でば-さんがこちらを見ている
ば-さんの気遣いと心配そうなまなざしが
ジ-さんにはつらい
或る日せき込んだジ-さんの背中をさすっているバ-さんに
呼び止められた私は傍により
「松ジ-さん、、、上の広場に遊びにこないか、、」
広場では20人足らずの老人が集って
ゴルフをしている 本当のゴルフではない
グラウンドゴルフです
老人の健康と親睦にはもってこいの球技だ
初めてより数年が経過している
真夏も真冬もこの里のお年寄りが
絶えず楽しんでいる
勿論 松ジ-さんもそんなことは知っているし
誰からともなく誘われているのだ
今ぱ-さんが私を呼び止めたのは
ジ-さんを誘ってほしいとのことだろうと思い
「松ジ-さんよ すぐ上だ 皆も来ている
遊びにおいでよ ただ広場では煙草はすえんぞな」
「おら いかん だいきれだで」
タバコが吸えないのが気に食わないのかそれとも
ゴルフが嫌なのか その時私に思い当たるものがあった
このジ-さんの学校時代は軍事教練が体操の時間だったのだ
高学年の人たち銃剣術とかでぼろぼろにきたわれた
生傷も絶えまないとか私は低学年だったからその事情はわからない
このジ-さんたち球技の面白さを知らない可哀そうな時代の子だ
「ジ-さん 又誘うからな、、、
その後事あるごとにジ-さんを誘った
バ-さんの傍より浜辺の一人のジ-さんが誘いやすい
それで浜辺の説徳が続いた
あまりの私のしぶとさに
「、、、負けたよ アンタの言うこと きくでな、、」
遂に広場参入がきまった
だが実際に広場に顔をみせたのは
それから2週間後になった
体調がよくないのだと察した
(つづきます)